粟国島にある偉人顕彰碑をめぐって解説してみた～バルチック艦隊第一発見者は粟国出身の青年編～

前回の更新から大分時間が経ってしまいましたが、綺麗な景色は出てこないちょっと地味な“偉人顕彰碑”シリーズ第二弾です。

少し話が脱線しますが、実は前回から今日の間にAGUNI　ISLAND　GUIDE　MAP(観光ガイドブック）が最新版に変わりました！（裏表紙に、2019年5月・第四版発行とかかれたものが最新です。）大幅な内容の変更はありませんが、大人の事情で紙質が変わったりニューオープンの店などが追加されてますのでチェックしてみて下さい。とまりん(那覇泊港)や粟国港待合所（2階）、粟国島内各所でゲットできます。

さて今回は、ガイドマップP3・4の全島マップに青丸で示されている偉人顕彰碑二つ目『奥浜　牛（おくはまうし）の碑』について私なりに解説したいと思います。

碑の場所は、185号線（島一番の大通り）を西に進み大正池公園を通り過ぎ、パークゴルフ場やマハナ展望台へ向かっている途中に「わー海が見えてきた」と感じるT字路の近くにあります。

▲第一段の時に撮った写真なので、寒々しい曇り空とススキがバックになっています。

碑を読んでみたところ、どうやら奥浜牛さんという人はロシアのバルチック艦隊の進航を最初に発見した日本人らしいです。　

奥浜さんは粟国島字西出身で、出稼ぎのため粟国島から那覇へ移り住み、雑貨を船で宮古島まで運ぶ仕事をしていました。1876年～1920年に実在した方で、この頃日本は明治～大正時代初期。沖縄はかろうじて琉球だった時代でしたが、1879年に「沖縄県」が設置されたので奥浜さんは琉球から沖縄に変わる歴史的瞬間にも立ち会った方ですね。これもすごい。

当時、日本とロシアは朝鮮半島と満州の権益を巡って争われた【日露戦争】中（1904年～1905年）だったため、航海へ出る際には警察より注意を受けていました。しかし海に強い奥浜さんはとても勇猛果敢であったため、怖じけなかったそうです。

そして1905年（明治38年）5月25日、いつもどおり那覇港を出発し宮古島へ向かいましたが、なんと慶良間諸島と宮古島の中間地点あたりで、ロシアのバルチック艦隊（ロシアが編成した艦隊の呼び名）と遭遇。奥浜さん達は40隻余りの沢山の軍艦に大変驚きましたが、バルチック艦隊は何事もなく引き返していきました。どうやら奥浜さん達の船の旗が中国風だったことや、髪を結んでいたこと、そして日本語ではなくうちなー口で会話していたため、中国人と勘違いしたそうです。

そんなこんなで死なずにすんだ奥浜さんは、宮古島到着後すぐさま警察署へ駆け込み、バルチック艦隊の進航を伝えました。事の大きさに尋問を重ねられましたが、奥浜さんは命をかけて説明を続け、結果この一報は信じられ、久松五勇士によって宮古島から八重山局（石垣）へ伝えられました。

さてここで新しく登場した“久松五勇士（ひさまつごゆうし）”ですが、宮古島には電信局が無くバルチック艦隊目撃を軍令部へ伝えるためには、一番近い電信局がある石垣島へ伝えに行かないといけませんでした。そこで選出された勇敢な5名の総称が久松五勇士です。今もなお英雄として語り継がれ、宮古島ではお菓子の名前になっている程だそうです。（おそらく第一発見者の奥浜牛よりも有名かもしれません。粟国島も奥浜牛っていうお菓子とか作ったらいいかもしれません。）

少し久松五勇士トークで脱線しましたが、この話しには『遅かりし1時間』といった悔しいエピソードがあります。

結果としてバルチック艦隊目撃情報を一番最初に軍令部へ伝えたのは、信農丸といったまた別の登場人物で、八重山局からは遅れて1時間後の報告だったそうです。。。

様々な理由があるかと思いますが、粟国村誌にも書かれているように「印鑑持ってない」事件がロスタイムを生じてしまったかもしれません。第一報を伝えた宮古署で作成された請書に奥浜さんの捺印が必要でしたが、生憎奥浜さんはその時印鑑を持っていなかったため押すことが出来ませんでした。そのため宮古島で印鑑を新調し後日捺印し手続を終了したそうです。

そしてこの時新調した印鑑は、奥浜さんが亡くなる時に遺族へ遺したとのことです。

さて、文字ばかりになりましたが以上で解説は終わりです。お分かりいただけたでしょうか？基本的には碑の説明分や粟国村誌、粟国アーカイブスあたりを参考にしてますが、ネット上には色々な説がありました。（日付けが若干ずれていたり。）ですので、※諸説ありですのでご了承ください！

最後にですが、偉人顕彰碑の位置が粟国島の海が見える場所にあるために「ここから奥浜さんはバルチック艦隊を発見したのかぁ～」と思いがちですが、違いますのでお気を付けて下さい。